企画展「はりまの星・日本の星」(姫路科学館)

姫路科学館で2019年12月21日(土)~2020年1月19日(日)開催の「はりまの星・日本の星」を見学してきました。

展示内容は大きく4部、日本独自の天体観測や星座を紹介した「日本の天体観測」、西洋の古星図や現代の写真星図などで私たちになじみの深い星座を扱う「西洋の星座」、そして、星の和名を収集してこられた桑原昭二氏と北尾浩一氏の資料を展示する「星の和名を集める」と、兵庫県に残る星の和名を紹介する「はりまの星」です。

「天象列次分野之図」などの日本の天文学を代表する資料のほか、星曼荼羅の実物が展示されていました。釈迦金輪を中心に、北斗、九曜星、十二宮、二十八宿を配します。十二宮は現在の星占いでお馴染みの黄道十二宮ですが、よく見ると、おとめ座が2人。ふたご座は、なんと男女。おとめ座は「双女宮」、ふたご座は「男女宮」「陰陽宮」さらに、おとめ座と同じ「双女宮」と呼ばれていたとか。おとめ座がなぜ2人なのか、ふたご座はなぜ男女なのか、いろいろ興味深いところです。

桑原昭二氏の名前は、野尻抱影氏の「日本星名辞典」にしばしば出てくることで知りました。姫路市立姫路高校の教師時代に、同校の生徒たちと共に星の和名の収集を行われていました。実際に聞き取り調査に使われたレポートが展示されていましたが、専用に印刷された用紙を使っていたのに驚きました。調査者の署名欄に「何年何組」だけでなく「何期」の項目があり、長期にわたって調査を進める覚悟であったことがうかがえます。

北尾浩一氏は、初期に「星なかまの集い」実行委員を務めていただいたことがあります。現在も精力的に和名の収集を行われています。先ごろ、その成果を「日本の星名辞典」にまとめられました。BSプレミアムの「コズミック フロント☆NEXT」にも出てこられました。

さて、はりまの星です。和名の常として、同じ天体について実に様々な呼び名が伝わっているものですが、比較的狭い地域の中でも、同じ天体について異なる呼び名がいくつも収集されているのが面白いです。いろんな要因が考えられますが、体系化された学問上の名前ではない、市井の人々の間でそれぞれに呼ばれ伝えられたから、いろんな呼び方があるのかと思いました。

まさにこの星の和名こそ、庶民の間に星が身近にあった証拠と言えます。もちろん、季節を知るとか時刻を知るとかいう実用上の意味もあるわけですが、なぜ星の動きから季節や時刻がわかると知っていたのか、また純粋に実用上の意味しかないのなら、なぜそこに伝承が付いてまわるのでしょうか。

さて、果たして現代は、星や宇宙は、近いものなのでしょうか。