「渾天壱統星象全図」と『実相院日記』

京都市岩倉の実相院門跡へ。

門跡寺院とは天皇家の血を引く方が住職を務められた寺院です。1229年開山、本堂である客殿「滝の間」の、黒漆を塗った床に庭のモミジが映る「床もみじ」「床みどり」が有名です。

実相院、実は、中国の清朝の時代に作成された「渾天壱統星象全図」を所蔵されています。
また、同寺院の坊官(門跡に仕え、身の回りの世話や事務の補助を行う僧侶で、剃髪はしていますが、妻帯肉食を許可されていました)が江戸時代初期から記した『実相院日記』には、オーロラや彗星などの天文現象の記録があります。

で、8月末まで、この二点が公開されているということで、拝観してまいりました。

まず日記。くずし字ですが、オーロラを示す表現とか彗星とか、かろうじて読み取れます。もちろんちゃんと説明もあります。
陰陽師が参内してこれこれの天象のときはこうと奏上したとか、天皇崩御の日にこんな彗星が表れたとか、天で起きる事象と地上で起きることの関わりにこの時代でも関心が強かったことが察せられます。

奥の本堂に「渾天壱統星象全図」。青地に白字で、中央に大きく星図、周囲に天文について説明した文章、屏風にしたててあります。拝観者も少ないので、前に置かれた座布団にべたっと座ってじっくり眺めていました。

「渾天壱統星象全図」は、中国には残っていないのに日本にはなぜか何枚もあるそうで。

天文科学館の「淳祐天文図」と見比べたいところですがさすがに手元に写真はなく。
黄道は描かれていなくて、赤道、北回帰線、南回帰線が同心円状に描かれています。中国星図におなじみの、紫微垣、太微垣、天市垣に星宿。老人はいたけど、トイレはわからず。

この時期の京都ではあるのですが、さすがに岩倉はメジャーな観光地からは離れており、実相院も拝観者は少なく、ゆっくりと見て回ることができました。
また大きなお寺ではないので、上がってすぐに見たいものが並んでる感じです。
もちろん「床みどり」も、他の参拝者と取り合うことなくじっくりと堪能しました。