京都大学 大学院理学研究科付属天文台 飛騨天文台。
1968年、観測環境が悪化した花山天文台に替わる観測施設として、岐阜県高山市の大雨見山に設立。現在は太陽観測を中心に活動を続けています。
年に1回の一般公開に当選してしまいました(ヨメが←ここ大事)ので、行ってきました。
なお、普段は関係者以外の立ち入りはできません。
高山駅からシャトルバスで1時間半かけて天文台へ。最後の数キロは車一台通れる幅の急斜面の砂利道で、整備はされているものの、普段は見学を受け入れていないのも納得というか。
ここには、現在、次の観測装置があります。
- 太陽磁場活動望遠鏡(SMART)
- ドームレス太陽望遠鏡(DST)
- 65センチ屈折望遠鏡
- 60センチ反射望遠鏡
このうち、現在観測に使われているのはもっぱらSMARTとDSTの2つです。
太陽磁場活動望遠鏡(SMART)
まず、長い長い廊下を通ってSMARTへ。廊下の突き当りはいきなり観測室です。SMARTは4本の望遠鏡からなり(1台は休止中)、各望遠鏡がとらえた太陽像がリアルタイムでモニターに映されていました。一番新しい観測施設(といっても2003年)で、太陽全面をHα線と連続光で観測し、太陽フレアやCMEのメカニズムの解析と宇宙天気予報の実現に向けた研究に使われています。
ドームレス太陽望遠鏡(DST)
戻ってまた一番反対の端にあるDSTへ。WEBサイトの航空写真を見るとわかりますが、全体にコの字型につながった渡り廊下の端と端にSMARTとDSTがあります。
DSTは太陽の一部分を詳細に観測します。透過幅が非常に狭いHαフィルターで特定の波長だけを観測する垂直分光器が1階に、可視光の全波長にわたって高分解能で分光する水平分光器が2階に設置されています。
なんとカールツァイスオーバーコッヘン製。
まず1階の垂直分光器。
向こう側の壁に白いスクリーンがあり、まずここに太陽像を投影。これはファインダーみたいな役割で、スクリーンを見ながら、見たい領域を視野の中心に持っていきます。
で、その領域からの光を分光器を通しCMOSカメラで撮影。撮影した画像がこちら。
同じく垂直分光器が撮影したリアルタイムのプロミネンス
2階の水平分光器。
ミラーで90度に反射させた光を、壁の向こうにある分光器に通し、分光した光が写されます。
65センチ屈折望遠鏡
国立天文台三鷹キャンパスに静態保存されているものと並んで東洋最大。国立天文台とちがって、こちらは、動きます。昇降床ももちろん動きます。かつて惑星観測に使われていました。
サブスコープに至るまですべてがカールツァイスオーバーコッヘン製。
これで昼間の星を見せていただく予定でしたが、ここにきて雲に覆われ…望遠鏡だけの見学となってしまいました。
長い長い渡り廊下
太陽観測施設は50メートル以上離して建てられています。太陽を観測する一方で、太陽熱による空気の揺らぎの影響を抑えるため、表面で太陽光を反射するなどの工夫をしていますが、他の施設が反射した太陽光の影響を別の施設が受けないように、とのことです。また、太陽望遠鏡は地面から立ち上る陽炎の影響を避けるために高い位置に設置されています。で、それらの施設は行き来をしやすくするために長い渡り廊下で結ばれています。
廊下を歩くための緑スリッパと施設内に上がるための赤スリッパに使い分けられ、見学者だけかと思ったら、名前が書いてあるスリッパも各所に置いてあったので、普段からそういう運用のようです。
3つの京大天文台
京大天文台は、アマチュア天文台の聖地である花山天文台、3.8メートル「せいめい望遠鏡」を擁する岡山天文台、そして今回見学した飛騨天文台からなります。
最近は「せいめい望遠鏡」が研究では目立つ印象ですが、その「せいめい望遠鏡」の、恒星のスーパーフレアの研究には、最も近い恒星である太陽のフレアを観測している飛騨天文台の成果が活かされるなどしているようです。